2007年6月6日 「北朝鮮へのエクソダス」

仕事は仕様書の作成が佳境に。しかし、構成が今ひとつまとまらない。誰かうまい方法を考えてくれんものか。

テッサ・モーリス・スズキ「北朝鮮へのエクソダス」を読む。必読。北朝鮮への帰国事業の源流が、実は日本政府の積極的な関与にあったこと、さらに、帰国事業の盛り上がりの裏には日本を初めとする各国の思惑と駆け引きがあったことを、2004年に公開された国際赤十字委員会の機密資料から明らかにしている。最近公開された資料に基づく新事実ではあるのだが、内容はむしろ推測どおりの展開。戦前の玉虫色の植民地政策のツケとして、戦後日本の独立による国籍剥奪で突如発生した数万単位の異国人。日本の伝統的な排他性を考えれば、当時の日本政府が彼らの出国を積極的に望んでいたと考えるほうが(その良し悪しは別として)利にかなっている。

政治的な話は非常に興味深かったが、それ以上に、帰国者たちの「祖国」で直面した落胆と絶望、脱北者が語る北朝鮮への複雑な思いには心を打たれた。いま氾濫している北朝鮮批判は、そういう人間的な悲しみへの共感を伴っているのだろうか、と思う。