2003年9月6日 世界都市展

d20030906-01   相方と、駅のポスターでずっと気になっていた世界都市展を見てきました。

場所は六本木ヒルズです。六本木ヒルズといえば、昨日ちょうどルイ・ヴィトンがオープンしたということで、混んでるかなと心配していたのですが、予想していたほどひどい混み具合ではありませんでした。(といっても決して空いていたわけではないですが)。

展示会場は森タワーの展望フロア。入場料1500円は高いなぁ、と思ったら、展望フロア込みの料金だそうで、せっかくなのでまず展望フロアを一周。ビルの展望フロアというと、普通はひざぐらいまで壁があったり、一番いいところにレストランや喫茶店があるものですが、ここは窓ガラスが足元まであり、また一周するあいだほとんどさえぎるものもありません。あと、何箇所かテラスもあって、そこはなんと金網越しですが外に出ることもできます。東京中が見渡せるので、面白がって知っているところを片っ端から探して歩いたのですが、なぜか、アメリカ大使館が見えるテラスは、そこだけ閉鎖になっていました。これって保安上の理由ですかね。

d20030906-03d20030906-02で、次に都市展のほうへ。展示の内容はというと、ロンドン、パリなど世界の大都市との比較を通して、東京の都市計画を考えよう、というもの。要は森ビルによる東京のビル開発のPRと、六本木ヒルズ版「プロジェクトX」だったわけですが、これが結構楽しめました。

展示のメインは世界の大都市のジオラマです。ロンドン、パリ、フランクフルト、ベルリン、上海、ニューヨーク、そして東京が、模型で再現されていました。特にすごかったのはニューヨークと東京で、この2つの都市は、航空写真に基づいてかなり精密に作られていました。ニューヨークは行ったことがないのであまりピンと来なかったのですが、東京はだいたい六本木を中心に新宿、御茶ノ水、品川、渋谷の範囲が、ビルのひとつひとつまで再現されていて、時間を忘れて見入ってしまいました。隣にいた家族連れなんて「うちの実家がある~!」って喜んでたぐらいなので、本当に忠実だったようです。私も、知ってる建物はほとんど見つけることができました。私は、というか男性の多くはそうだと思うのですが、こういう「ミニチュアもの」にすごくひかれるのですよ。ただ、ジオラマがあまりにも大きいので、手前にあった新宿、渋谷はよく見えたのですが、奥にある上野方面は肉眼では見えません。そのため、入り口ではオペラグラスを売ってました。

d20030906-05それから、すごく心に留まったのは、ビルが出来る前の六本木六丁目を写したビデオです。たぶんバイクか小型車にカメラを載せたのでしょう、細い路地を縫うようにして走る様子が、運転席からの視点で淡々と流されていました。たぶん「あの狭かった場所が今こんなにすばらしく生まれ変わった」という意味で流していたのでしょう。しかし私は、ダムの底に沈んだ村のような、「失われた街」を見た気がして、ちょっと熱いものを感じました。

かなりじっくり見たので、展示会場を出たのは7時過ぎ。ちょうと日が暮れたところで、夜景がみごとでした。展示会場の出口がちょうど二階分のガラス張りの吹き抜けになってたので、まさに大画面の夜景。デートだったらこりゃたまらんでしょう。他のお客さんからも歓声やため息が上がってました。

ただ、ここの夜景って、東京中が見渡せるからきっとすごく綺麗だろうと期待してたのに、意外に光が少なくて、思っていたほどではありませんでした。どうしてだろうと考えて気づいたのですが、要するに、ここ六本木界隈には、「生活の光」が極めて少ないということなのでしょう。旅行先でいろんな夜景を見ましたが、東京よりずっと小さいのに夜景の綺麗なところはたくさんありました。そういうところは、それぞれの光は明かに生活の光だったわけです。まあもっとも、今日は土曜日だからこうだっただけで、平日の夜ならオフィスの明かりがたくさんあってすごく綺麗だったのかもしれませんが。

そのあたりの話は、さっきのビデオの感想とも重なっていると思います。昔、NHKで、写真家の篠山紀信が東京を空から撮る、という番組があったのですが、知ってるひといますか? その番組では、渋滞する道路など、東京のいろんな表情を写していくのですが、最後、東京の夜景を撮っている途中で、篠山さんは目を真っ赤にして、こんな風景を自分ひとりで独占してしまって良いのか?という意味のことを言ったのが、すごく印象的でした。灯かりの一つ一つに、人々の日々の生活がある。それをこんな高いところから、神様のように見下すことが、果たして許されるのか。それは、感動というよりは、畏れの表明だったのだと思います。夜景を見ながら、そのことを思い出しました。街はそこで生活している人々のもので、人々が生きている以上、変わっていくのは当然で、だから古いものが新しいものに変わっていくのも自然なことなわけですが、どんなに変わっても、生活感のある街であってほしいなあ、と思います。特に六本木界隈は、近くの麻布十番をみればわかるように、意外に生活感のある街だし、もともとはアウトローたちの跋扈する人間くさい街だったらしいし(そのあたりの話はロバート・ホワイティング「東京アンダーワールド」に生き生きと描かれています。この本はオススメ)。

すっかり堪能した私たちは、へろへろになって地上に戻り、その後は、和菓子のトラヤが経営する「TORAYA Cafe」なるカフェへ。ここはあんこ好きにはたまらんだろうと思います。サンプルがなくて、私のように和の甘味系に疎いとメニューから実物が想像しづらいのが難点ですが、逆にそれが面白いかも。右隣の席は外国人二人と日本人女性が一人でしたが、彼女は外国人二人にちゃんとメニューを説明できたのだろうか?外国人が片言の日本語で「マッチャケイ」(抹茶系?)と言ってたのが妙に可笑しかった。