再び職場の引っ越し。といっても10階から12階へ移っただけですが。いつもなら,梱包だけ自分でやって,運ぶのは業者任せだったのですが,このご時世,できることは自分でやれ,ということで,運搬も自分でやりました。えらい疲れました。
会社帰りの電車の中で,昨日すこし書いた,小熊英二『<日本人>の境界』を読み終えました。日本人とはどの範囲の人を指すのか,それはどう決められ,どう動いてきたのかを,朝鮮,台湾,アイヌ,沖縄の歴史から検証した本です。もともと小熊氏の博士論文として書かれた堅い本で,700ページを越える大著,おまけに値段もびっくりの5800円と,他人に気安く勧められる本ではありませんが,近現代史に興味のある方,特に,最近の「自尊」史観に対してきっちり理論武装をしたい人は,読まれるといいと思います。膨大な資料を引用しており,しかもこのページ数,本当ならもっと退屈になってもよいところですが,意外にも最後まで放らずに読めました。それは,もともと私がこういうテーマに興味があるというのもありますが,それ以上に,小熊氏の,人間をきっちり理解しようとする態度による部分が大きいと思います。特に,第12章,台湾議会設置請願運動の高揚と衰退の話と,第13章,唯一の朝鮮人衆議院議員・朴春琴の奮闘と挫折の話,それに第18章からの沖縄復帰運動の話は,歴史に翻弄された人々の無念さが強く伝わってきました。
ちなみに『噂の真相』4月号(先月号)に小熊氏のインタビューが載っています。著書の内容から,血の気の薄い若年寄タイプの男を想像していたのですが,写真見たら全然違ってました。なんでも,バンドやってて,インディーズとしてCD出したこともあるそうです。あと大学の研究室のサイトで写真見つけたのですが,これがまたカッコ良い。